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トヨタ産業技術記念館

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トヨタ産業技術記念館

  • CLIENT

    トヨタ自動車株式会社

  • PLACE

    愛知県名古屋市西区則武新町4丁目1-35

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トヨタ産業技術記念館
水野 高伸

水野 高伸 様

一級建築士/建築設備士/設備設計一級建築士

1984年、トヨタ自動車株式会社に入社。自動車製造に関わる施設やショールーム・展示施設の企画・計画を国内外で手掛ける。1997年より国内最大級となる自動車展示施設の建設を担当。近年では大学の建て替えプロジェクトの企画・設計・施工管理業務に携わる。

名古屋市西区の「トヨタ産業技術記念館」内にある「レストラン ブリックエイジ」。2019年のリニューアルにあたり、入口面にカーテンのような可動ガラス「デュアル・ハンガー・ベール」が採用されました。水野様が開発した技術と、株式会社みやびの意匠が融合した業界初の内装材は大きな注目を浴びています。プロジェクトについて、水野様と、株式会社みやび代表取締役社長・髙島、常務取締役・齋藤が当時を振り返りました。

どのようなきっかけで、両者のお付き合いは始まりましたか?

水野:私は、トヨタ自動車の社員としてさまざまな建設プロジェクトに携わってきました。近年の傾向として、CO2低減など地球環境に配慮した建物が強く求められるようになっています。その一つとして「ダブルスキンシステム(以降ダブルスキン)」という建築手法があります。これは、建物の外壁、ガラス面の一部または全面をガラスで覆って二重構造とし、その間で自然換気や蓄熱することで、空調負荷を低減させるシステムです。夏は日射熱を低減し、冬は断熱性を向上させることができます。しかし、コストが高い、後付けができない、意匠性が低いといった課題がありました。

髙島:水野さんは、従来の「ダブルスキン」の課題を解決しようと努力を続けていらっしゃいますよね。

水野:はい。従来の「ダブルスキン」のように強度のあるガラスを2枚建てるのではなく、内側のガラスを内装材にすることでコストが削減できるのではと考えました。ガラスメーカーのAGC株式会社さんと共同で開発を進め、ガラスをカーテンのように吊り下げる内装材「デュアル・ハンガー・ベール」が誕生しました。上下2分割の構造にすることで軽量化も実現しました。ただ、試作段階では、機能は予定通りでしたが、建具としての美しさに欠けていました。一般的に販売されている既製品の枠で作っていたため、ビスもたくさん出ていました。そこで、サッシメーカーさんから紹介いただいたのがみやびさんでした。評判は伺っていましたので、意匠面を全面的にお任せさせていただきました。

水野さんからお話があった時は、どのような印象を受けましたか?

髙島:私たちは意匠が得意ですので、「ぜひお任せください」と言う気持ちでした。試作の「デュアル・ハンガー・ベール」を見せていただき、サンプルをつくりました。当初は、カーディーラー向けに開発しているというお話でしたので、下部パネルのガラスに余計な桟がないことが目標でした。桟があると車を並べたときに視界の邪魔になってしまいますので、桟を抜いた造りにしました。

齋藤:内装のプロとしては、見た目の美しさからビスは外に出さないことが私たちの基本です。その中でどのようなデザインができるかというチャレンジでした。また、約2mもあるものをどう運ぶかも課題でしたね。ガラスが風にあおられたり、立てる間に割れてしまう可能性があったりと、施工方法も含めて前途多難だなと思いました。

水野:屋外で実験したときに、ガラスが割れることもありました。私が一番不安だったのは、ガラスを“吊る”ということでした。他の素材だったら、穴をあけてビスを通して吊るのですが、薄いガラスには穴を開けることができません。穴を開けず、さらに安全性を確保して吊る良い方法が浮かばず、ずっと悩んでいました。

齋藤:もともとは、アルミ材とガラスを接続するかん合材が樹脂だったんです。ですが、屋外で実験した際に樹脂が伸縮してガラスが落ちてしまいました。樹脂は使えないけれども、アルミとガラスを直接着けると割れてしまう可能性がある。そこで、割れないで吊り下げられるような仕組みを考えました。

水野:本当にいい提案をしていただいたと思っています。

髙島:なかなか苦労しましたね。ガラスの間に、アルミでできた楔(くさび)型の部材を入れたんです。三角形の構造なので、部材に作用する力は軸方向だけになり、強度が高くなります。普通は経年劣化でガラスが落ちてしまいそうですが、落ちようとするほど逆に締め付けるので、安全なんです。さらに、水野さんの考案でワイヤーを通して、安全性を二重に確保しました。

水野:実験で安全性はクリアしていたのですが、どうしても心配だったので、ワイヤーを目立たないように通したんです。部材で支えるとともに、ワイヤーでも吊る。これなら安心して世に出せると確信しました。意匠面に関しても、みやびさんの提案が素晴らしく、他の多くの課題に対しても、いろいろな人とアイデアを出し合いながらまとめ上げていただき、奇跡のようなプロジェクトになりました。大変感謝しています。

どの段階で「レストラン ブリックエイジ」への設置が決まったのでしょうか?

水野:トヨタ産業技術記念館(以降記念館)の近隣に大型ショッピングモールの建設が計画され、レストラン・ブリックエイジ(以降レストラン)を改装する計画も持ち上がりました。このタイミングでは「デュアル・ハンガー・ベール」はまだ開発中でした。リニューアルにあたり、記念館の“売り”のエントランスホールや中庭の空間をレストランから見せたいという要望が出ていました。

髙島:記念館は大正時代の工場跡を再生し建築されています。施設の様子を見ながら食事を楽しんでほしいという話から「デュアル・ハンガー・ベール」が採用されることになったんですね。

水野:当初は厚いガラスを自立させる計画だったのですが、基礎工事にかなりコストがかかることが分かりました。そのタイミングで「デュアル・ハンガー・ベール」の商品化が決まりました。後付けもでき、基礎工事も必要ないというコスト面のメリットと、高い意匠性が評価されて採用が決まりました。

髙島:採用が決まってからは、急に締め切りができて現実味が増しましたよね(笑)

水野:ユーザーやゼネコンを呼んで「サッシの色は黒が良い」など意見を出し合いましたね。もともと上部のガラスは、遮熱樹脂パネルを使っていましたが、このレストランは陽が当たる場所にはなかったので、そのパネルは下部と同様の透明のガラスにしました。

髙島:完成を見た時は想像以上にきれいで驚きました。建具業界でも、建具にフレームのないガラスを吊るすものは存在していませんでした。無駄がない機能美で斬新ですし、何度見てもかっこいいなと惚れ惚れします。レストランの雰囲気にもぴったりでした。

水野:実験室で吊り下げているものをずっと見てきましたが、完成したときの喜びはひとしおでした。1+1が2ではなく3にも4にもなった感覚でした。おかげさまで、エントランスを眺めながらから食事ができると、ご利用のお客様からも好評です。このレストランは、「デュアル・ハンガー・ベール」を採用した第1号となり、トヨタとしても店舗の内装を手がけた珍しい事例となりました。

今回のプロジェクトを通して、得たものはありましたか?

髙島:衰退していく業界の中で、どう特異性を出していくかを模索していました。自社の製品を見直していくと、全然企業努力ができていないなと。デジタルテクノロジーと融合させれば、空間や社会的に価値があるものを作れるのではないかと研究をしている中で、水野さんに出会ったことは、大きな転換点になりました。

水野:社長の向上心がすばらしいですよね。私は、世の中にないもので、驚かせたいという思いで40年ほど働いてきました。その感覚がとても似ています。

髙島:私も、自分と同じような感覚の方がいらっしゃるのだと感銘を受けました。今回のプロジェクトを通して、環境への配慮をもっと意識していかないと、と実感しましたね。会社として目指すべき方向が見えたのは、この開発がきっかけです。

齋藤:建具は、ただぶら下がっているもの、付いているもの、というイメージがありますが、今回のように、CO2低減などの機能をつけていくことで、新たな価値を生み出せるのだと気づかされました。まだまだ私たちにできることはあるんだなと。

水野:みやびさんにしかできないものがたくさんあると思います。いきなり全部を変えたり、ゼロから作ったりというのではなく、今ある技術を用いて何ができるのかを考えて、少しずつ積み重ねていけば自ずと良いものができると思います。

齋藤:私は個人的に、水野さんの仕事の姿勢にも刺激を受けました。物事を考えている時が非常に楽しそうで。その姿を見て、目標に向かって進む楽しさやチャレンジ精神など、ものづくりの本質を教えていただいた気がします。このプロジェクトの前後では、モチベーションがぐんと変わりました。

水野:私は建築面から地球環境へどう貢献できるかを長年考えてきました。今回みやびさんとタッグを組ませていただいたことで、内装分野からもできることがまだまだたくさんあると可能性を感じ、今後への大きな希望になりました。“美しくスマートに地球環境へ貢献”がキーワードです。

最後に、今後の展望を教えてください。

髙島:もともと、「デュアル・ハンガー・ベール」は、カーディーラーのCO2を低減するために開発されていました。大きな開口部がガラスになっている建物だと、エアコン効率がすごく悪いんです。そのような場所はカーディーラーに限らず、世の中にたくさんあります。さらに研究を進めて、環境に配慮した製品づくりに力を入れていきたいと思っています。

齋藤:ホテルや商業施設、公共施設など、景観を見せたい場所や、吹き抜けのような広いスペースがある場所に「デュアル・ハンガー・ベール」を提案していきたいです。実は、「デュアル・ハンガー・ベール」は上部のガラスに映像を流すことができるんです。可能性はまだまだ広がっていくとワクワクしています。

水野:ガラスを多用したビル建築が増加している中、気温の上昇、光熱費の高騰を受け、ダブルスキンも今まで以上に注目されるようになりました。今回の製品開発のように、部材の一部を建築構造材から内装材に替えたことで、建材メーカーのみやびさんにも、コスト、デザイン、エネルギー効率など、さまざまな面で協力していただけるようになりました。今回のプロジェクトは終わりではなく、むしろ始まりだと思っています。今後も自由な発想を出し合い、新しい製品づくりに携わっていきたいと思っていますので、どうぞご期待ください。

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